和田正人に対するインタビュー！陸王の効果？

ＴＢＳ系ドラマ「陸王」の効果もあり、駅伝への関心が急上昇している。ドラマでニューイヤー駅伝を走った俳優の和田正人さんは、大学卒業後に入った実業団チームが１年後に廃部となり、俳優の道を選んだ。和田さんに、選手のセカンドキャリアについて聞いた。【週刊エコノミスト編集部】

◇役を通じて走ったニューイヤー駅伝

－－出演中のＴＢＳ系ドラマ「陸王」で、実業団チーム「ダイワ食品」の一員として、ニューイヤー駅伝を走りました。

和田正人さん　ニューイヤー駅伝を走ることは大きな目標でした。「陸王」でひさしぶりにタスキリレーをし、やっぱり重みを感じましたし、自然に泣けてきました。もし走っていたら、どんな気持ちだったのか。役を通じてニューイヤー駅伝を走ったことで、ぼくの陸上人生に一つの区切り、決着をつけられたと思っています。

＜和田さんは、大学卒業後に陸上を続けるためにＮＥＣに入社。わずか１年後の２００３年４月、ＮＥＣが陸上競技部の廃部を発表した。廃部をきっかけに、退社して俳優というセカンドキャリアを選んだ＞

◆実業団を選ぶときに、「廃部」とは考えもしませんでした。ＮＥＣは大手だし、ちょうどパソコンが売れていた時代で、右肩上がりでしたから。廃部がなければ、その後も長距離を続けていたはずです。「やり切っていない」という思いはずっとありました。

「陸王」でぼくの演じた平瀬孝夫は、ニューイヤー駅伝を最後に引退しました。竹内涼真君の演じる茂木裕人は、肘を壊して野球から長距離に転向しました。引退前、平瀬が茂木に「後悔しているか」と語りかける場面があります。「おかげで長距離に出合えてよかった」と答える茂木に、平瀬は「おれもこれからそういう何かを探さなければ」と前を向く。

陸上に携わってきたぼくが、この役を演じさせてもらったことに、感謝しています。陸上選手は引退後も、陸上を続けてきた経験を生かして、輝ける人生を送れるということを伝えることができた。

◇陸上選手は現役時代は稼げない

－－廃部を経験した立場から、選手のセカンドキャリアについて、周囲はどう支えてほしいと思いますか。

◆難しい問題ですが、悲しいかな、陸上はアマチュアスポーツなんですよね。選手はビジネスとして成立していない。強い選手でも現役時代に稼ぐことは難しいので、引退後が本当に大切です。セカンドキャリアをどうするかと考えても、会社に残ってサラリーマンになるか、陸上部のコーチをするか。でも、コーチの受け皿は潤沢にあるわけじゃない。

現状では、３０歳過ぎまで競技をやってきた人ができることは限られています。まず、引退後も陸上界に携わっていける環境を整えてほしい。もっと陸上や長距離がメジャーになれば、陸上に関連するビジネスがもっと増えるはずです。

東京五輪の２０２０年以降、バブルがはじけて終わるのではなく、どう人気を維持し、高めていけるか。自分が青春時代をささげた陸上が、泡のように消えていってほしくない。生涯を通じて、携わることができる環境になってほしいと切実に願っています。

◇タスキリレーは日本人のよさ

－－駅伝人気を、選手はその後の人生にどう生かすべきでしょうか。

◆箱根駅伝やニューイヤー駅伝が注目される一方で、陸上は日本選手権でも競技場が観客でいっぱいになることはない。それが事実です。現役時代に、引退した先輩から「今は注目されていても、引退して２、３年たつとお前のことは誰も知らない」と言われてきました。でも注目されることは本当にありがたいことで、ビジネス的な観点でみると、駅伝がなかったら、陸上長距離界はどうなっていただろうと思います。

大切なのは、自分の中で陸上としっかり向き合うことです。世の中との向き合い方を考えながら、選手としての時間を生きる。走ることだけを考えていればいい時代は終わったのかな。注目されている時期に、例えばＳＮＳ（ソーシャル・ネットワーキング・サービス）で発信したり、自分の能力をどう社会に生かしていくべきかを自分で社会にプレゼンしたりする。それがセカンドキャリアにつながる。

－－駅伝の魅力や、駅伝から学んだことは。

◆選手として壁を乗り越えるため努力する時間を、子どものころからずっと生きてきました。限界を超えるすべを模索し、試行錯誤して大学、実業団にたどり着いている。根性や、精神力はあると自覚しています。そういう能力は「人対人」というビジネスの場でも生きると思います。

芸能界に限りませんが、１人でできる仕事はありません。仕事はみんなでタスキをつなぐという面もありますから、一つの物をみんなでつないでゴールに向かうところに日本人のよさがある。先に引退したぼくらが経験や思いを、後輩につなぎたい。それがひとつの道になればいいなと思います。

◇和田正人さん略歴

わだ・まさと　１９７９年高知県生まれ。日本大学時代に２０００年、０２年の２度箱根駅伝を走る。０２年ＮＥＣ入社。０３年、陸上競技部の廃部に伴い、俳優に転身。主な出演作にＮＨＫ朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」、ＮＨＫ大河ドラマ「おんな城主 直虎」。

出典：https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171214-00000008-mai-bus_all

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